もうすぐ高校や大学などを卒業という読者の方もいらっしゃることでしょう。日本では桜の季節の3月が卒業というのが普通ですが、アメリカでは毎学期末(主に5月、12月)が卒業式の季節です。アメリカの大学は卒業単位が揃った学期で卒業することができるため、学期ごとに卒業式(Commencement)を行います。
晴れて卒業を迎える学生がいる一方、残念ながら卒業に至らず、中退してしまう学生もいます。昔からよく「アメリカの大学は入りやすく出にくい(入学しやすく卒業しにくい)」とも言われていますが、果たして本当でしょうか?ここでは統計データやNCN学生の実績をもとにまとめてみました。
アメリカの大学の卒業率
アメリカの教育関係の統計を取り扱う政府機関・National Center for Education Statistics(NCES)の2020年統計1によると、米国全体の4年制大学で4年以内に卒業を迎えた学生は、全体の46.6%でした。4年で卒業できているのは半数以下という結果ですが、実際には卒業単位を超えて追加履修をしている学生や長期インターンを行っている学生も少なからずいるため、さほど重視すべき数字ではありません。
では、それも踏まえた5~6年以内というところでは、5年以内の卒業率は60.5%、6年以内では64%まで上がります。NCN学生についても7年以上在籍する学生は少数ですので、トータルの卒業率は「およそ65%から、70%には行かないくらい」が実態に近い数字と言えるでしょう。
ただ、日本の大学の4年での卒業率が82%2という状況からすると、やはり低い数字と言えます。日本では2つ以上の学士号を取るダブルメジャー制度は無いので基本は4年で卒業となるにしても、まだ開きがあると言えるでしょう。この違いの理由は何でしょうか?
上位大学になるほど卒業率も高い
アメリカではチャンスそのものは平等に与えるべきという考え方が一般的で、入学希望者の数%しか受け入れないトップスクールもある一方、学生としての最低要件(高校GPA2.0など)を満たした全学生に入学のチャンスを与えるオープンな大学まで幅広いレベル分けがされています。
トップスクールは難しいという印象もあるでしょうが、それに対応できる優秀な学生のみを集めているのであって、卒業率は全米平均より非常に高いものになっています。出願者の25%以内しか受け入れない最上位の大学群では、6年間の卒業率は91% にも達しており、他方、オープンな大学ではわずか28.1%にとどまります。
アメリカの大学は「難しいから」卒業率が低いのではない
オープンな大学は、学習の機会は平等に与えるものの、大学卒業に至るための学習の努力や結果が足りなければ容赦なく排除し、構造上、卒業率が下がることは当然と割り切っている大学だということです(もちろん、それぞれの家庭事情や働きながら学ぶ社会人、また米国ならではの事情では、米軍に従軍しながら卒業を目指す方などもいらっしゃるので努力だけの問題でもありません)。重要なのは、アメリカの大学は機会は平等に与えるものの、卒業を易しくはしないという点です。そもそも学力が低めのところからのスタートとなることが多いため、卒業に至るには人一倍の努力が必要です。トップスクールなどに比べれば普遍的な範囲かもしれませんが、それでも大卒としての最低限を満たさなければ学位はもらえませんし、アメリカ人も価値の低い学位を取っても意味がないと考えます。
ではこういったオープン系大学を除いて、仮にある程度のハードルのあるラインとして、50%以下の出願者しか受け入れないアメリカの大学だけの平均を取ると約79%と、日本の大学と同等の卒業率になります。
つまり、オープンな大学からトップスクールまで一律の指標で見るために卒業率が「一見」低く見えるのであって、実は「入りやすく出にくい」は正確ではないということになります。また上位大学になるほど、卒業は当たり前であって、より高い成果を求めて進学するということになるでしょう。
NCNの各受入大学でも同じ傾向で、NCN学生だけを抽出しても、上位大学ほど平均GPA(評定平均)も卒業率も高いという30年を通じての有為なデータが出ています。
改善を重ねるアメリカの大学
とはいえ、アメリカの大学としても卒業率は高いに越したことは無く、せっかく入学したからにはなるべく卒業してほしいという気持ちは同じです。学習サポート体制強化やICT教育の導入など様々な工夫を重ね、全米平均の卒業率(6年)は1996年入学者の55.4%→2014年入学者の64.0%と、8.6%も向上しています。
NCN学生の卒業率の秘密
さて、NCN米国大学機構では、NCN学生の卒業率を約95%と公称しています。
しかし、これは上記の統計とは単純比較はできない数字です。アメリカの統計上の卒業率計算では、個人事情は一切考慮せず、単純に「入学した学生が卒業した割合」を算出しています。
本機構では経済事情や病気、自己都合での進路変更など、不可抗力であったり本機構や大学の責任とは言えない要因でアメリカの大学を去った学生は除いて集計をしているため、正確に言えば「NCNや大学が指導を行っても卒業に至らなかった学生は5%」という意味に近い数字です。
米国統計に合わせてもNCN学生は約85%の卒業率
ただし、上記の「単純に入学した学生が卒業した割合」に当てはめて計算しても、過去10年の統計で84.6%の学生が卒業を迎えています(2024年現在)。手前味噌ながら、これはトップスクールに近い卒業率で、私たちが非常に誇りとしている部分です。大学からもNCNの日本人学生受入制度が高く評価され、NCN特別奨学金を提供されているのはこういった背景があるのです。
本機構では、共通審査で選考を行っていますが、基本的にはアメリカの考え方に従い、なるべく門戸を広く希望者にチャンスを与える方向で受け入れており、トップスクールを狙えるくらいの学力を持つ学生は世間の割合通り、10%にも満たない程度です。しかも、英語は合格後に鍛えるという学生も多くいます。
もしも受け入れた学生に何も指導をせず、自己学習に任せた場合は、統計的にも実感的にも、全米平均を大幅に下回る5割程度か、もっと低い卒業率になるのではないかと考えられます(そもそもアメリカの大学の卒業率は全米平均である以上、最初から英語のできるアメリカ人がほとんどである中の数字です)。
もしもNCNの指導が無かったら
「何も指導をしない場合」は、言い換えれば、個人留学等の日本人留学生の卒業率に近いとも言えるかもしれません。仮に4割は成功、6割は失敗と考えれば、それが「入りやすく出にくい」の一番の根拠になっているのかも、とも想像できます。この言葉はずっと昔からありますが、インターネットが無かった時代は情報収集の難易度も現在より高く、卒業率はさらに低かったでしょう。
もっと言えば、この米国統計は「4年制大学の入学者」という前提のため、「語学研修でTOEFLなどの英語基準をクリアできずに大学に入学できなかった留学生」は含まれていません。残念ながら本機構から留学し、卒業できなかった5%の多くは、準備不足で英語力が上がらず、語学研修をクリアできなかった学生です。
そう考えると、何も指導が無ければ卒業率5割を切るのは確実かと思われますし、逆に(数字の遊びでしかありませんが)NCN学生の卒業率計算で語学研修段階での帰国者を除き、完全に米国統計通りの計算をした場合は、トップスクール並みの90%近くの卒業率になると思われ、改めて計算してみて筆者も驚いています。しかも、一般的には私立大学の方がサポートが良い分、州立大学よりも卒業率が高いと言われる中、NCN学生のほとんどは州立大学の学生です。
もちろん学力があり、卒業は当たり前という学生に対しては、自己手配の留学より良い成果を出すための指導が行われているということも付記しておきます。
コミカレ経由はもっと低い卒業率
ちなみに、同じNCESの統計で、コミュニティカレッジ(2年制の大学準備機関)進学者の3年以内の卒業率は34%と4年制大学の半分近く、4年制大学への進学(編入)率はわずか14%です。3
アメリカ人が中心の母数での数字ですので、わざわざ外国まで来ている分、学習意欲がアメリカ人より高いと思われる留学生については平均を上回ることは確実ながら、よほど最初から学力英語力が高いか、自己管理、学習努力のできる学生しか卒業・進学できていないというレベルの数字でもあります。ちなみにNCNで唯一の受け入れ対象のコミカレであるサンタモニカカレッジには、学力や学習習慣的に十分なポテンシャルを持ち、カリフォルニアの上位大学に進学を目指す学生のみ受け入れるという方針です。
私たちが、原則としてコミュニティカレッジをお勧めしていない理由はここにあります。「コミカレの方が進学しやすい」「英語力や学力が不安だからコミカレ」「少しでも安いのでコミカレに自力で行く」という選択は卒業までのトータルで見れば統計上から疑問符がつきます。コミカレについてはまた別の機会に詳しく書きたいと思います。
長文を最後までお読みいただきありがとうございました。私たちも皆さんの挑戦を心待ちにしています。
文責:堀 宏輔(NCN米国大学機構 入学審査室長)
- https://nces.ed.gov/programs/digest/d20/tables/dt20_326.15.asp
Table 326.15. Percentage distribution of first-time, full-time bachelor's degree-seeking students at 4-year postsecondary institutions 6 years after entry, by completion and enrollment status at first institution attended, sex, race/ethnicity, control of institution, and percentage of applications accepted: Cohort entry years 2008 and 2013 ↩︎ - 「ひらく 日本の大学」河合塾・朝日新聞調査 https://www.kawaijuku.jp/jp/research/hiraku/ ↩︎
- https://nces.ed.gov/programs/digest/d21/tables/dt21_326.20.asp
Table 326.20. Graduation rate from first institution attended within 150 percent of normal time for first-time, full-time degree/certificate-seeking students at 2-year postsecondary institutions, by race/ethnicity, sex, and control of institution: Selected cohort entry years, 2000 through 2017 ↩︎
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