第1回では拙文ながらAIのある世界でどう学んでいくべきか?という議論をしてみました。では、AIそのものに興味を持ち、アメリカの大学でAIを学ぶにはどうしたらよいでしょうか。

推奨する専攻

Artificial Intelligence(AI)を学部レベルの専攻として設置する大学は徐々に増えてきていますが、どちらかといえばユーザーとしてAIを活用する方法論やAIツールの管理者をめざすといった、いわば道具としてAIを使いこなすというニュアンスの専攻が多い印象です。

基本はコンピューターサイエンス

元の理論から本格的に学びたい場合は、コンピューターサイエンス(Computer Science、以下CS)専攻が適切です。上記のArtificial Intelligence専攻の中には、CSを中心に、よりAI方向の味付けを濃くしたようなCS専攻の変形版という場合もあります。
さらに根本的な概念から学びたいのであれば数学(Mathematics)専攻という選択もあります。ただし、数学専攻は当然高度な数学力が求められますので、「数学そのものがとても楽しい」という学生以外にはあまりお勧めできません。一般的にはCS専攻がお勧めです。
ただし、どんな分野でも根本に通じている人材は社会でも非常に高い評価をされます。同じアメリカに行くなら、徹底的に究めるという考え方もあるでしょう。

大学院進学後に本格的に学ぶ

学部レベルでコンピューターサイエンスを学び、その後大学院(Master)で本格的にAIを専修分野(Concentration)としていきます。大学によっては博士号(Ph.D)まで用意されています。

大学院の履修科目の例

ネブラスカ大学オマハ校 Computer Science専攻 Artificial Intelligence 専修

種別講義番号科目名
CS学部必修CSCI8000プログラミング言語の高度な概念
CSCI8080アルゴリズムの設計と分析
CSCI8150 高度なコンピュータアーキテクチャ
CSCI8530 高度なオペレーティングシステム
CSCI8700 ソフトウェア仕様と設計
CSCI8910Capstone(卒業プロジェクト)
AI専修必修CSCI8456人工知能の概要
AI専修選択
(3科目)
CSCI8110人工知能の高度なトピック
CSCI8300画像処理とコンピュータビジョン
CSCI8360テキストの機械学習
CSCI8450自然言語理解における高度なトピック
CSCI8476パターン認識
CSCI8480マルチエージェント システムとゲーム理論
CSCI8486ロボット工学のためのアルゴリズム
CSCI8590ディープラーニングの基礎

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履修の流れ

基礎知識の獲得

AIの学習を開始する前に、コンピューターサイエンスの基本である数学とプログラミングの基礎知識を身につけることが重要です。線形代数、確率と統計、微分積分などの数学的概念に加えて、AIの制御によく使用されるPythonなどのプログラミング言語を学ぶことが推奨されます。大学の授業やオープンな教材、書籍を活用して基礎知識を習得しましょう。高校生の場合は、理系レベルの数学を高校で選択できるならば履修しておきましょう(大学で改めて学ぶこともできます)。

STEP
1

AIの基本概念の学習

AIの基本概念を学ぶために、大学のAIに関する授業を受講することが有益です。機械学習、ディープラーニング、自然言語処理などの主要なテーマについて学びます。この学習段階では、アルゴリズムやモデルの原理、データ前処理、評価指標などを理解することが重要です。コンピューターサイエンスの予備知識をつけてあることが前提で議論をしていくため、多くの大学では3年生・4年生向けの授業となります。さらに本格的には大学院で学んでいくことになりますので、大学院進学も視野に入れた進路選択をしましょう。

STEP
2

プロジェクトの実践

学習の過程では、学習した理論を実践するために、実際のプロジェクトに取り組みます。大学の実習コースやオンラインのデータサイエンスプロジェクトなどを利用して、実データを扱いながら機械学習やディープラーニングの手法を実践します。プロジェクトを通じて問題解決能力や実践的なスキルを磨くことができます。

STEP
3

研究への参加

AIの分野で研究に参加することは、さらなる成長と学びの機会を提供してくれます。大学の研究室や教員のもとで研究プロジェクトに参加するか、インターンシップや研究インターンシップを探して実践的な研究経験を積むことが重要です。研究によって、AIの最新トレンドや応用領域に触れ、独自のアイデアや発見を追求することができます。

STEP
4

専門化と応用領域の探求

AIの分野は広範であり、専門化や応用領域の探求が可能です。自然言語処理、音声処理、ロボティクスなど、興味のある領域を選択し、それに特化したコースやプロジェクトに参加することで深い知識とスキルを獲得します。これらは複合領域になるものもあり、必要に応じて他の専攻の授業を履修したり、場合によってはダブルメジャーと呼ばれる複数の学位取得なども視野に入ってきます。

STEP
5

理論と実践がアメリカの強み

大学でAIを学ぶ学生は、理論と実践を組み合わせた総合的な学習フローを追求することが重要で、そのための環境はアメリカには全て揃っています。

基礎知識の獲得から始め、実践的なプロジェクトや研究への参加を通じて知識とスキルを深め、専門化や応用領域の探求に取り組むことでAIの専門家として成長していくことができます。

さらに、大学卒業後に一定期間働き、また大学に戻って追加の知識を得るという選択肢もあります。実際の問題に取り組み、知識を加えるために大学に戻り、という繰り返しができるのもアメリカの大学の強みです。

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第1回『AIはアメリカ留学の夢を見るか?』でも述べたように、これからは否応なくAIと付き合っていかなければならない時代です。AIを極めて社会をリードできる人材を目指しましょう!

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